ジョンソン&ジョンソン、リクルートに学ぶ理念の作り方~航海型の塾経営を~Part2


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こんにちは、城野優です。前回は企業(塾)経営には「理念」の存在が重要であること、そして、「理念」を経営に生かしている企業の代表例をご紹介させて頂きました。「理念」が明確化されており、社員の全員に「理念」が浸透していれば、社員の全員が会社が向かいたい方向へ自走的に動くことができるため、マネジメントの関与コストが下がります。今回は、「理念」の作り方、そして「理念」を組織へ浸透させる方法についてお話させて頂きます。

「理念」を考える上で一番重要なのは、そもそも企業(塾)を通じて「何を実現したいのか?」という点について経営層自身が腹落ちするまで考えぬくことです。塾を通じて、「全ての子供の可能性を最大化させたい」のか「子供達に勉強の楽しさに気づいて欲しい」のか「国を背負って立つ一部のエリートを育成したい」のか「グローバルに通用するリーダーを育成したい」のかによって戦略、教育内容、採用する教員の層が全て変わってきます。
まずは、そもそも「何をしたいのか?」というところをしっかりと考えぬいてください。また、「理念」を考える上で大きなポイントがあります。企業(塾)を通じて、「社会」に対して「社員(先生)」達にどのようになってもらいたいのかという「社会」と「社員(先生)」という視点も必ず入れてください。なぜなら、企業(塾)活動は、社会に影響を与えるものであり、「理念」が内部に閉じた視点のみで作られていた場合に、「理念」が社会に受け入れられない可能性が高いためです。
また「社員(先生)」という視点は非常に重要です。会社の「理念」実現に向けて日々、仕事を行う当事者となるのは、まさに「社員(先生)」達です。企業(塾)を通じて「社員(先生)達に~となってもらいたい」という視点がないと「社員(先生)」達は単なる企業(塾)の駒に過ぎなくなってしまいます。会社のファミリーである「社員(先生)」のことを考えていない「理念」では、「社員(先生)」達の会社に対する愛着やロイヤリティは希薄になり、いずれ離れていってしまうでしょう。例えば、「企業(塾)は全ての学生が自分の可能性を最大限発揮できる世界を目指します。」「企業(塾)は先生達が教育のプロフェッショナルとして成長し続けられるような環境を目指します。」という「理念」があれば、塾の経営戦略や先生の教育に対する考え方が非常に明確になります。例えば、塾のサービス対象の学生の学年を広げるか広げないかの議論があった際には、”全ての学生が自分の可能性を最大限発揮できる世界”という「理念」にたち返れば、対象の学年を広げるという方針は確定し、あとは”タイミング”と”How”の論点に絞り込めます。また、「成長を感じられない」と感じている先生がいるのであれば、「先生達が教育のプロフェッショナルとして成長し続けられるような環境を目指す」という「理念」に立ち返り先生が成長できる環境作りを早急に行わなければならないという共通認識を組織全体で持つことができるでしょう。

次に「理念」を組織に深く浸透させるための、コツについてお話させて頂きます。逆説的ですが「理念」が組織に浸透していないケースではどんな要因が考えられるでしょうか?大きく分けて2つ要因があります。

1つ目の要因は「理念が認知・認識されていない」という要因です。1度や2度「理念」を伝えただけでは、全く浸透しません。すぐに忘れられてしまいます。何度も伝え続け、ありとあらゆるシーンで「理念」が目につくように工夫をします。ジョンソン・エンド・ジョンソンやリクルートでは、入社式、キックオフ、各種アワード、外部向けのIRイベント等のありとあらゆる場で「理念」の話を行い、また「理念」が書かれたカードを社員に携帯させ、生活の中で「理念」が目につく・耳に入る機会を増やし、「理念」が確実に認知・認識されるように工夫しています。塾経営であっても同じような工夫が有効です。大きなイベントやクオーター毎のミーティング時には「理念」の話をしっかり行い、「理念」について書かれたカードをネームカードと一緒に携帯してもらう、などの地道な積み重ねが1番効果が大きいのです。

また、2つ目の要因は「理念が認知・認識されているものの、腹落ちして理解されていない」という要因です。つまり「理念」を文章としては知っているけれども、理解ができていないという状態です。「理念」は往々にして抽象的な内容になりがちなため、「じゃあ日々の行動に落とし込んだらどうなるの?」という日常に落とし込んで考えることが難しいことがあります。こういったケースの対処法として有効なのは、「理念についてディスカッションする場を定期的に設ける」ことが有効です。「自分達は理念をこう捉えている」「理念に照らし合わせると、経営方針に違和感を感じる」など「理念」に関して社員(先生)が自由にディスカッションする場を設けてあげるのです。自分達の言葉で「理念」を語り、間違っているところについては経営からフィードバックをもらえば、次第に理念を自分の言葉で理解できるようになります。「理念」を組織に浸透させるコツは、「理念」のコミュニケーション機会を増やす、そして、「理念」についてディスカッションできる場を設ける、という2点です。

2回にわたり、「理念」についてお話しさせて頂ました。「理念」がない企業(塾)は目的地がない漂流船と同じ状態です。「顧客」「社会」「社員(先生)」のそれぞれに対して、成し遂げたい「目指す世界観」を定義し、着実にしっかりとゴールに向かって進んでいく”航海型”の塾経営を目指してみてはいかがでしょうか?

筆 者

城野優(Yu Shirono)

アメリカ合衆国出身。慶應義塾大学在学中に自身の勉強法を”城野式”として体系化し多くの本を出版。また講師として日本全国の生徒、保護者の方のアドバイザリーに従事。大手米系外資系メーカーのマーケティング・宣伝担当を経て現在は大手広告会社に勤務しながら、教育・マーケティングコラムニストとして活動。著書は「なまけものの大学受験勉強法(高陵社)」「きれいにノートは取るな-間違った勉強の常識(ごま書房)」等。

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