研修は講師の命


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講師は塾にとって重要な営業マンです。労働集約型ビジネスである以上、講師の質が塾の生命線と言えます。講師が良ければ、生徒は辞めません。友だちを連れてきてくれます。講師の採用については、別にお話をさせていただきました(「塾講師の採用がビジネスの成功を左右する」)ので、今回は講師を育てる研修について取り上げたいと思います。
素材がいくら良くても育て方を間違えては、ただのボランティアになってしまいます。この場合、ボランティアになるのは講師ではありません。経営者がボランティアをすることになるのです。

講師の研修は「教育ではない」と割り切る

企業における研修をイメージしてみましょう。企業は独自の基準で採用した人材に、社会人としてのマナーを含め、企業理念を教え込ませます。会社は何をしたくてどういう方向に進みたいのか、その際の手段はどのようなものを善しとし、何を悪と考えるのか。OJT等を通して、先輩社員から実地に教え込むこともあります。ここで重要なのは、あくまで企業の価値観です。新入社員は、その企業価値に沿って成長していくことになります。

同様に塾講師の研修で大事なことは、その塾の価値観を最初に教え込むことです。仕事として、企業価値の実現に協力してもらうことが最大のポイントです。個人塾でよくあるのは最初にそこを曖昧にしたため、後に経営者とぶつかって講師が辞めるというケースです。経営者と考えが合わずに講師が辞めていくと、生徒に動揺を与えます。「なぜあの先生は辞めたの?良い先生だったのに・・・。」このようなことがあると塾に対する不信感が沸き上がり、生徒数が増えないばかりか減っていくことにもなりかねません。ですから、最初の研修で塾としての価値観をしっかりと伝え、協力をお願いするのです。それも適正な報酬を与えた上で、お願いするのです。最初にしっかりと価値観を共有できていれば、塾に対する不満を抱いて講師が辞めるという事態は防げますし、講師がそれぞれ勝手な価値観に従って生徒の指導をすることもなくなります。

もう既にご理解頂けたかと思いますが、塾講師の研修をいわゆる「教育」というイメージで捉えてはいけないのです。塾の理念・価値観を共有することが、塾講師の研修なのです。

新入社員とは異なる塾講師採用者

講師は小学校、中学校、高校とそれなりに良い成績を収めてきています。成績を上げるそれなりのノウハウを持っているのです。ここが一般企業の新卒採用者とは大きく異なるところです。

一般企業で言えば、経験者を中途採用することに近いと言えます。「近い」と言いましたが、「同じ」ではありません。一般企業が中途採用をする場合、ある程度の能力とスキルに納得の上、採用となります。しかし塾講師の場合は、そう簡単な話ではありません。講師の持つノウハウは、あくまでその講師にのみ通用したノウハウであり、目の前の生徒に合ったノウハウとは言えません。更に主婦講師などは自分の子どもで上手くいったノウハウに自信を持っている場合もあります。そのノウハウが他の生徒に通用する保証はないのです。それにも関わらず厄介なのは、彼らは自分が信じるノウハウがベストのように思っていることです。だからこそ最初に価値観を共有しておかなければ、講師毎にバラバラな発言をし、生徒を混乱させることになってしまいます。

どういう学習指導を善しとし、生徒のどういう成長過程を理想とするのかを、しっかりと理解してもらいましょう。塾内の講師が同じ理念・価値観を共有できれば、枝葉末節が異なっても結論は同じになるはずです。もっと言えば、塾全体が一つの目的に向かって一致団結できるのです。

スキルとして統一すべきこと

塾講師のスキルとして、全員で統一しておくべきことがあります。それは、「塾で成績を上げる」ということです。「講師の力で成績を上げる」とは違います。講師の力で生徒の成績を上げるということになると、講師が多くの時間を使ってめんどうみをする傾向になります。当然講師が生徒の指導をしている時間に対して彼らの報酬が発生しますが、塾には必要な経費代も入ってこないということになります。まさにボランティアです。このような状況も必要だと思われるのであれば、月○時間までというように明確なルールを定めておきましょう。そういうルールを徹底できないならば、申し訳ないですが、その塾の寿命は長くはないでしょう。

スキルとして大事なのは、「塾」を活用して成績を上げることです。そのために必要な費用は、保護者の方に負担して頂く必要があります。

講師の負担を軽減する仕組み

「塾で成績を上げる」というスキルは、塾内で講師が情報共有し協力し合える仕組みを使うスキルです。講師一人が全責任を負うのではなく、講師全員が生徒の情報を共有し合い、何をどうすれば良いのかを理解し合えるようにするのです。「○○先生に・・・を伝えておくから、□□君はここの問題を解いて、△曜日に○○先生に見せてね」、「■■君は、・・・が苦手だね。今度△曜日に●●先生の特別授業があるから受けてみないか?」というように、講師の負担を軽くすることができるようにするのです。「これってスキルなの?」と思われた方がもしもおられたら、はっきりと断言しておきます。これは間違いなくスキルです。なぜなら責任感の強いコミュニケーション能力に優れた講師は、生徒から頼られたら「自分で何とかしてあげたい」と思うのです。そこを、自分でフォローするのでなく、塾の仕組みを利用するようにアドバイスをするのは、なかなか難しいのです。中には「ごめんね~、塾の決まりで私は教えられないの~」等と、生徒と会話する講師もいたりしますから、要注意です。

まとめ

「研修が講師の命」というタイトルに嘘はありません。とにかく最初の研修がしっかりとしていないと、後々余計なトラブルとの戦いになります。途中から方針を変えるとなると、あちこちに気を使いながら、じっくりとやっていくことになります。そのこと自体が悪いとは思いませんが、その間のコスト増・収益減を覚悟しなければなりません。ですから最初に、しっかりとした理念・価値観の共有とスキルの確立を目指した方が、長く続く評判の塾になれるのです。

Gaku

大学入学直後から塾講師のアルバイトを始め、大学3年時には大手の進学塾講師となる。そこで経験した「研修」に魅了され、週4日授業を担当して、学生ながら新卒の年収以上を稼ぎ出す。大学卒業後も、塾講師のやりがいを忘れられず正社員として大手進学塾に再就職。現場経験を計15年積んだ後は、本部職員として事業計画・売上予測作成や収納管理、人事、財務の経験を積む。現在は創業支援や外国人のビザ申請取次などをする行政書士として事務所を経営中(http://www.gaku-office.com/)。

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